1998年3月、衝撃的なニュースが世界を駆けめぐりました。性的不能治療薬がついに発売されるというのです。薬の名は「バイアグラ」。人類史上これほど歓迎され、これほど短期間で売れた薬はかつてありませんでした。
バイアグラは、そもそも心臓病患者のために開発され、臨床試験が繰り返されていた薬です。しかし、製造元の米国ファイザー社の担当者は、試験期間が終わっても、被験者の男性たちが薬をなかなか手放そうとしないということに気が付きました。不思議に思って調査し始めたら、この心臓病治療薬が男性の機能に絶大な効果をもたらしていることがわかったのです。
それから先は、もはや説明は不要でしょう。アメリカでは約3ヶ月間で200万枚以上の処方箋が書かれ、当時の日本でも一刻も早くこの夢の薬を手に入れるための、ハワイへの「診断・処方箋付き購入ツアー」が企画され、個人輸入業者には毎日数百件の問い合わせが殺到しました。ハワイへの購入ツアーでバイアグラを買った日本人が、あまりに多くのバイアグラを持ち込み、税関でチェックされたこともありました。
週刊誌では毎週バイアグラがどれだけすごいかといった特集が組まれ、そのアナウンス効果によって、本来バイアグラを必要としない人までもバイアグラを求めるようになったのですが、その中には性感を高めたい女性も入っていたようです。
もちろん、バイアグラが旋風を巻き起こしたのはこの2国だけではありません。ブラジル、イギリス、台湾、香港、カナダ、イスラエル。イタリアに至ってはトウガラシをたくさん入れた「バイアグラ・ピザ」なるものが登場、バイアグラをエサにした「バイアグラ売春」もはびこるようになったと言われています。
男性を興奮させたという意味では、バイアグラは、どんな漢方薬やドリンク剤よりも効果があったというわけです。しかも、バイアグラは本来インポテンスに悩む男性のための治療薬であるにもかかわらず、健康な人々の間でも欲しがる人がたえません。
実際、東京・銀座のクラブホステスとお客の間では、アメリカの薬局で1錠8~10ドルで手に入るバイアグラが、1錠5万円で取引されていると言われ、歌舞伎町ではまるで麻薬取引のようにこっそり取引されているなどという報道もありました。
そのわけは、バイアグラがもたらす強力な勃起効果に尽きます。男性にとっていつの時代も、女性を性的に満足させることは見果てぬ夢です。そのために大事なのが“持続力”。バイアグラには、インポテンスを治すだけでなく、持続力を高める効果があるというのです。
「ニューズウィーク」誌によると、実際飲んだブラジルのコラムニストは新聞に「なんといっても、パートナーを心から喜ばせることができたのがうれしい。たしかにお金はかかるが、この幸福は金には換えられない」と書いています。「バイアグラのおかげで持続時間が2倍になった」と喜ぶ人もいました。
こんな話を聞いて「俺にはいらないよ」と言いきれる男性がどれだけいるでしょうか?世界中の男性が夢中になるというのも無理からぬ話です。
バイアグラは精力剤ではありません。化学的に男性の勃起を妨げる酵素の働きを弱めることで、機能を高める薬なのです。
従来、インポテンスの男性に対する治療では、ホルモン剤やパパベリンという薬などを、性交の前に直接注射していました。その効果は実証されていますが、いちい医者に行って注射してもらわなければならない。その効果は約4時間ほどしかない、といった不便な治療法です。これに対し、バイアグラは性交の約1時間前に一錠飲むだけ。インポテンスで悩む男性からこれまでの面倒な下準備から解放したのです。
ここで、いま考えられている勃起のメカニズムについて説明しておきましょう。
①性的に興奮すると大脳から「ペニス中の科学物質の分泌を増やせ」という信号が発せられる。
②分泌されたcGMPにより、ペニス中の海綿体がリラックスした状態になり、さらにcGMPによって
ペニス中の動脈が広がる。
③そのため、ペニスに大量の血液が流れ込んで、ペニスが勃起する。ただし、流れ込んだ血液は
ペニス中の静脈からたえず流れ出している。
④ここで、健康な男性の場合、cGMPが十分分泌されるので、勃起した後、硬くなった海綿体が
ペニスの静脈を圧迫し、血液の流出が抑えられる。だから勃起が持続する。
⑤インポテンスの男性の場合、cGMPの分泌が少ないか、cGMPを破壊する酵素の分泌量が多すぎる。
そのため、ペニス中の静脈から勃起に必要な血液が流れ出てしまうので勃起しなかったり、勃起しても
すぐに萎えてしまう。
⑥バイアグラはこのcGMPを破壊するPDE5の働きを弱めるので、分泌されるcGMPの量が少なくても
完全に勃起させることができる。
心臓病の治療薬に、こんな思わぬ効果があったのです。
Q.バイアグラの効果はすぐに表れるのですか?
A.性交の1時間前くらいに服用するのが一般的です。ただしバイアグラは人によって、またインポテンスの症状の度合いによって効果の表れ方も若干違ってきます。ファイザー社では、性交の4時間前~30分前くらいの間であれば自分の症状に合わせていつ服用してもかまわないとしています。
Q.バイアグラの特別な保管方法はあるのですか?
A.基本的には他の医薬品と同じように湿気や高温を避け、室温を15℃~30℃の室内に保管すれば問題はありません。また、子供の手の届かないところを選ぶことも大切です。
Q.勃起している間は、ガンガンSEXしても平気ですか?
A.こればかりは、人によるでしょう。相手の女性がついてこられるかという問題もありますし。ただ注意しなくてはいけない点があります。バイアグラ服用後の性交中もしくは性交直後に死亡した事例が報告されています。いずれも死因は心臓発作もしくはニトログリセリン系の薬によるショック死であると報告されています。これに関してFDAは、「バイアグラそのものの危険性よりも、“過度の、激しすぎる性交による”心臓麻痺、心臓発作のほうが危険」と発表しました。このことからも、勃起力が回復してがんばってしまう気持ちもわかりますが、だからといって極度な性交は控えたほうがいいということが言えるでしょう。
Q.バイアグラをペニスに塗っても良いのか?
A,バイアグラを粉末してペニスに塗っても効果はありません。誤解が多いのはこの点なのですが、バイアグラは、ペニスを直接勃起させる薬ではありません。飲み薬として服用することで血液中を回り、勃起を阻害している体内酵素の働きを弱めることで、勃起促進を図る薬です。ですから粉状にしてペニスに塗りつけても、バイアグラ本来の効果は得られません。
Q.バイアグラを輸入して服用するのは違法ではないのか?
A.あくまで個人使用ということであれば合法です。日本では処方箋のいるバイアグラですが、輸入することを認めていないのではなく、「輸入して販売する」ことを認めていないというスタンスなのです。ですから、インポテンツに悩む個人が、自分の責任おいて、自分が使用する分だけを個人で輸入するのであれば、違法行為にはなりません。ただし、医薬品の個人許可を持たない者が大量に輸入して、誰かに売ってひと儲けとなると、完全に違法です。
Q.1錠を自分で割ってバイアグラの分量調節をしてもいいのですか?
A.バイアグラには25mg、50mg、100mgの3種類がありますが、ほとんどの場合、医師が推薦する用量は50mgです。勃起力の状態によって、用量を変えてもいいかもしれません。100mgを半分に割れば、50mg1錠と同じ用量になります。ただし個人による増減の幅はあくまで25mgから100mgの間です。要するに、販売されているバイアグラの用量の範囲ということになります。ただし、100mgを半分にカットして使用したほうが、50mg1錠よりも経済的となります。
Q.バイアグラを他のインポテンスの薬と併用するとどうなるのでしょうか?
A.勃起不全治療薬(レビトラ、シアリス)とバイアグラを同時に服用した場合の安全面における検査、有効性に有無について、製造元の米国ファイザー社では検査を行っていません。ということは、極端な言い方をすれば、「併用したらどうなるかはわからない」ということです。「2種類飲めば、2倍効くかも」などという素人判断は非常に危険。したがって、他のインポテンツ治療薬・勃起障害治療薬との併用は避けるべきです。
Q.2錠の飲めば、1錠飲んだときの2倍の効果があるのでしょうか?
A.服用するバイアグラの分量が倍になっても、効果は10%増しくらいです。単純に2倍の効果が出るわけではありません。ただし、副作用はかなり強くなってしまう恐れがあります。必要以上に飲みすぎるのは大変危険です。
Q.バイアグラを飲めば、誰でも必ず効果がでるんですか?効果が出ない人もいるのですか?
A.インポテンスの人すべてに効果があるわけではありません。バイアグラと言えども、やはり、100%効くとは限りません。判断基準のひとつに、「朝立ちがあるかどうか」というのがあります。全く朝立ちがないようだと、効果の出ない可能性もあります。60を超えると、バイアグラの有効率は下がるという報告もあります。
Q.アルコールを飲んでからバイアグラを服用しても大丈夫ですか?
A.大丈夫です。このほかに、風邪薬や鎮痛剤と併用してもOKです。
Q.バイアグラを服用することで、精子に悪影響はないのでしょうか?
A.長期間の常用後という点では、いまだ研究中の事項。ただし、使用上の注意点を守って服用している分には、精子への悪影響はないとされています。
Q.医師の診断で「精神的要因によるインポ」と言われました。バイアグラを服用しても大丈夫でしょうか?
A.基本的には大丈夫です。バイアグラを服用すると、健康な人も勃起が促進促進されます。一回バイアグラの力を借りてセックスを成功させることで自信がつき、次からはバイアグラなしでもセックスできるようになる、といった使い方もあるようです。ただし肉体的に健康であるなら、あくまで「セックスでの自信を取り戻すための手助け」としての服用にとどめておいたほうがいいでしょう。バイアグラには精神的依存症になる可能性もあるのです。バイアグラなしではセックスできなくなってしまっては本末転倒です。
Q.バイアグラには依存性があるのでしょうか?
A.まだはっきりしたことは解明されていません。バイアグラという薬自体、FDAに認可されたばかりの新薬です。そのため依存性の有無など、長期間使用についての臨床研究に関しては、正直なところ、「まだこれから」というのが実情です。今後、解明され次第そういった類の発表があるでしょうが、現段階では購入者の自己判断で対応するしかないのも事実です。いずれにせよ、薬を長期間常用することが、健康にいいという話は聞いたことがありません。毎日毎日長期間の服用は避けるにこしたことはないでしょう。
Q.バイアグラは、早漏にも効果があるのですか?
A.効果はありません。バイアグラはあくまでも勃起の促進薬。勃起促進と早漏防止とでは、メカニズムにも違いがあります。ただ、早漏は改善されませんが、一度イッてしまっても、すぐに勃起が復活するようになります。「時間より回数で勝負できる」ことが、早漏気味の人に喜ばしいことなのであれば、そういう意味でのメリットはあるでしょう。
Q.女性がバイアグラを服用すると、どうなるのでしょうか?
A.人間の体の構造は基本的には男性も女性も同じ。女性が服用しても効果はあるであろうとされています。女性にはペニスがありませんので、この場合の“効果”とは、性的刺激をピックアップする感度が高まるということでしょう。前にも述べましたが、バイアグラは媚薬ではありませんので、精神状態はなんら変わりません。しかし、「女性を被験者にしての臨床研究の発表は行なわれていまし」ということは、バイアグラは、そのための薬ではないということ。女性特有の副作用がないとは限らないのですから、女性に飲ませるのはやめるべきです。
Q.インポテンツでない男性がバイアグラを服用してもいいのでしょうか?
A.服用はやめてください。バイアグラはインポテンツの人だけでなく、服用するすべての人に効果がある薬です。精力剤でもありません。つまり正常に勃起する健康な人が飲むと、「効果が出すぎる」ケースが考えられます。「勃起が長く続くなら、いいじゃないか」という声もありそうですが、7時間、8時間、9時間勃起したままという状態は、ペニスを構成する海綿体や毛細血管といった組織や細胞いものすごい負担をかけてしまい、悪影響がある恐れも考えられます。バイアグラはEDに悩む人のための薬であって、精力剤ではありません。健康な人は自分の力による勃起で十分なのです。
Q.バイアグラを服用すると、自分の意志に関係なく、勃起してしまうのでしょうか?
A.そうではありません。誤解を受けやすいのですが、バイアグラはペニスを直接勃起させる薬ではありません。勃起を阻害する体内酵素を弱めることで「勃起しやすくする」薬です。わかりやすく言うと、「これまで体内酵素に邪魔されてペニスに届きにくかった性的興奮を、邪魔物をやっつけることで、届きやすくする」効果のある薬ということです。ですから、なんでもかんでも勃起するのではなく、性的興奮・性的刺激を感じ取る「感度」が高くなると解釈してください。